アクション・スタント俳優専攻を卒業し、東宝芸能で活躍する木村さん。
舞台に立って気づいた思いや、業界が求める人物像などについて、東宝芸能取締役総務の勝野さんと語りました。
勝野 晋一 さん
東宝芸能株式会社 取締役総務担当 兼
エンターテイメント事業部長 兼
エンターテイメント事業室長 兼
東宝シンデレラ&TOHO NEW FACE育成チーム責任者
東宝株式会社の100%出資により、昭和38年に設立した大手プロダクション。
エンターテイメント業界で長い歴史を持つからこそ培った経験と実績を活かして、息の長い俳優・女優を多数輩出してきた。
髙嶋政宏、高嶋政伸・長澤まさみ・上白石萌音・上白石萌歌などの人気と実力を併せもった俳優陣が所属している。
木村 和磨 さん
2000年、東京都八丈島出身。
東宝芸能所属。
新体操を生かした伸びやかな表現力を持つ。
ミュージカル「Shuffle!〜まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』〜」、舞台「魔法使いの約束」などで活躍。
2024年3月上演の東宝舞台『千と千尋の神隠し』にも出演。
木村
僕は小さな頃からずっと、アクション俳優を目指していました。
東京の八丈島出身で芸能の知識もほとんどなかったので、業界に必要なことを幅広く学べて産学連携などにも力を入れている、東京俳優・映画&放送専門学校(以下:FC TOKYO)に入学を決めました。
勝野
東宝芸能も、FC TOKYOの学生さんには「東宝シンデレラオーディション」を受けていただくなど、さまざまなご縁がありますね。
木村
学生時代から業界に関わり、現場の空気を知ることができたのはとても良い経験になりました。
勝野さんから見たFC TOKYOの学生はどんな印象でしょうか?
勝野
みなさん明るく、あいさつもハキハキとされている印象です。
どの方も気持ちが良いため、現場をおまかせする安心感がありますね。
木村
ありがとうございます。
現場での立ち居振る舞いや業界のマナーなどについては、入学してすぐに教わることなんです。
卒業後も現場で何度も思い出して、関係者のみなさんに失礼がないように接することができました。
勝野
俳優を目指すみなさんの立ち居振る舞いというのは、業界に携わる人間なら自然と目に入りますからね。
そこを自発的に意識できるのはとても素晴らしいことですね。
勝野
木村さんが東宝芸能に所属していただくきっかけとなったオーディションでは、自己アピール動画を作っていただく課題を出しました。
そこで木村さんは十分に個性を出されていましたが、作られてみていかがでしたか?
木村
長ゼリフや歌の課題は基本を抑えた撮影をしましたが、課題曲の「アンダー・ザ・シー」は、「この一曲で、あなたの個性を見せてください」と資料に書かれていたため、とても悩みました。
勝野
間奏時間が長く、自由な発想が求められるため難しい課題だったと思います。
木村
ただ、難しいからこそ見せどころだと思ったので、自分の得意なアクロバットを組み込んだり、パントマイムをしたり、ぬいぐるみを相手に歌ったりなど、とにかくエンタメ性を考えて構成を練りました。
勝野
最後までやり切ろうという気持ちが伝わる動画でしたね。
木村
でも僕、もともと歌が苦手だったんです。
アクション俳優志望だから必要ないと思っていたのに、授業では演技やダンスより歌の授業が多くて驚いたほどで。
おかげで苦手意識がなくなるまで成長できましたが、他に自分よりも歌が上手い人もいたと思います。
どうして選んでいただけたのでしょうか?
勝野
苦手なものがあるのは構わないんですよ。
オーディションでは、やる気や伸び代、頑張って来た形跡、それから声質や身体の使い方などを見させていただきました。
木村さんは歌も良くダンスも安定されていましたし、工夫を凝らした動画はインパクトがあり、熱意と根性を感じたので、面談後に正式にオファーを決めさせていただきました。
木村
ありがとうございます。
東宝芸能はミュージカルなど歌が強いイメージなので、周りに負けないように、これからも歌を頑張ろうと思います。
勝野
業界的にもミュージカルの仕事は増えていますし、CMやドラマでも歌うシーンが出てくることがあります。
どんな俳優にも歌が必須の時代ですので、今後もしっかりと伸ばしてくださいね。
木村
僕の初めてのお仕事は舞台で、ネルケプランニングさんの「Shuffle! 〜まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』〜」のアンサンブルでした。
華やかな舞台は演じていて楽しく、それからもネルケさんの2.5次元系のお仕事が続いています。
勝野
初仕事はどうでしたか?
木村
最初は緊張しました。
けれど、学校で学んだことを意識して現場に臨めば、すぐに打ち解けることができました。
困ったら相談する同期がいましたし、恩師に歌のレッスンを受けさせていただいた時期もありました。
勝野
FC TOKYO卒業生を見ていると、卒業後も先生や友人とお話ができる雰囲気を感じていますが、その距離感は他にないかと思います。
役者は基本的に一人なので、困ったときに煮詰まりがちです。
話せる存在がいるのはとても貴重なんですよ。
木村
専門的な話ができる相手がいるのは強みなのですね。
ひとつ勝野さんにお聞きしたいのですが、どんな人物が今後の業界で求められるのでしょうか?
勝野
これからの俳優には、若い監督やクリエイターたちと共に育っていただきたいという思いがあります。
ですので、コミュニケーション能力が高い人や新しいことにも楽しんで挑戦できる人にぜひ来ていただきたいですね。
あとは今後、英語も大事になっていくと思っています。
木村
FC TOKYOも、英語の授業がはじまっているんですよ。
勝野
いいですね、東宝芸能でも英語は強化中です。
十年後を考えると、世界で活躍する人が今よりも増えると思います。
実際に舞台でも、海外の演出家を迎えていますよね。
木村
まさに僕が控えている来年の舞台は演出家が海外の方で、通訳がつきます。
海外の振付師やアーティストなどが来日して教えているという現場の話もよく聞きます。
勝野
役者にしか伝わらない細かなニュアンスもあるので、海外の講師から直接聞けるようになるのが理想ですね。
勝野
現役のFC TOKYOの学生さんに私から伝えたいのは、木村さんのように2年目で大きな舞台に出ているのはとてもすごいことなんです。
真面目にコツコツとできるのが木村さんのいいところで、現場で着実に評価されているのは努力の賜物だと思っています。
木村
ありがとうございます。
学生時代も自分より能力の高い人は大勢いましたが、高校時代に身体作りをしてきたので、体力だけは誰にも負けないつもりで3年間頑張りました。
現場に出ればもっとスゴイ人しかいない状況でしたが、学生時代の考えと変わらず、誰にも負けないアクロバットをしっかりと決めることで、自分の価値をアピールしてきました。
勝野
木村さんには順調にステップアップしていただいて、仮面ライダーや戦隊シリーズのオーディションを受けられるくらいのバリューをつけていただきたいと期待していますよ。
木村
はい!俳優人生は出発したばかりですが、東宝芸能に所属してから出会う人や世界がどんどん広がって、毎日がとても楽しくて幸せです。
ヒーローへの憧れは常に胸にありますので、必ずその夢を叶えるために邁進します。
勝野
FC TOKYOさんで自分のスキルをしっかりと磨いて武器を持った状態で来ていただいたこと、卒業後も相談できる仲間ができたことは、確かな強みになりましたね。
木村
意欲を持って学んだ3年間は、今の自分に100%つながっていると思います。
FC TOKYOで楽しいことだけでなく苦手なことにも真摯に向き合った時間は、業界のトップにいる人でも得ることのできないような大切な時間ですので、FC TOKYOの学生のみなさんにもぜひ濃厚な日々を過ごしてきて欲しいですね。