Interview
小道具で活躍する飯田さんに、学生時代の思い出、仕事への取り組み方について語っていただきました。
小道具
飯田 優花 さん
Iida Yuuka
2014年卒業
1992年、群馬県出身。主な作品は映画。
株式会社京映アーツに入社後、装飾、小道具助手を経て小道具として独立。
主な作品は映画「賭ケグルイ」「マイダディ」、Netflix「桜のような僕の恋人」。
映画「わたしの幸せな結婚」、Netflix「THE DAYS」、Netflix「シティーハンター」が公開を控える。
今は持道具&小道具担当として映画やドラマ撮影に参加しています。「持道具」というのは、役者さんの衣裳以外の装身具全ての事です。役者さんや監督と意見を交換しながら、靴、腕時計、帽子などを通して、ひとりひとりのキャラクターを作り上げていきます。
「小道具」を担当する時は、台本に書かれているものは勿論、書かれていないものも準備します。その登場人物がどんな生い立ち・性格でいつも何を持っているのか、お芝居をするために必要なものは何かを考え、用意をしていくんです。
入社した当時は装飾か小道具かを選べたのですが、私はより作品の形成に近いと感じる小道具のポジションから映像製作に参加したいと思いました。
毎日撮影現場へ行き、全てのお芝居を見ながら、日々小道具や持道具を変化させ続けていく仕事です。
最初にインターネットで調べた中で、一番面白そうな学校だと思ったからです。田舎育ちの私からするとFCでの学校生活は夢のように感じました。
面白そうな授業内容や卒業生の活躍、クリエイティブな校内の雰囲気など、全てが魅力的でした。
自主制作が一番の思い出ですね。専攻は美術でしたが、先輩や友達のお手伝いで1、2年生の頃は照明部としても参加していました。3年生あたりから美術で参加することが多かったです。
皆と色々な経験をしながら、自分達なりに頭をフル回転させて撮影していた日々はとても楽しかったです。上下関係や現場の緊張感、自分が人から必要とされること、撮影が終わった達成感、今でもあの頃の気持ちを思い出します。
辛かった日々もあったかもしれないけど、今ではもう思い出せません(笑)
私は舞台製作の衣裳を担当していました。その際に、渡邊先生から教えていただいた「強くなれば、みんなを守れる」という言葉を今でも覚えています。
私は今、小道具の責任者として数名の助手を抱えて撮影をしています。助手達が過酷な撮影環境で不安にならないように、小道具というパートがないがしろにされないように、日々発言と言動に責任を持って強くあろうと思って過ごしています。
この言葉は今でも私の仕事での教訓になっています。
在学中に紀里谷和明監督の特別講義がありました。私は紀里谷監督の作品を見ていて、とても興味があったので前の席で受講しました。
自由な質問タイムがあり、勇気を出して質問をしました。今でも思い出せますが、「自分の引き出しを増やすためにはどうしたら良いですか?」という質問をしたんです。
その答えは「安い居酒屋へ何回も行くなら、良いレストランに1回行ってみなさい」という教えでした。若かった私は全然ピンと来なかったんです。友達と安い居酒屋へ行くのがとても楽しかった時期でした。
でも、入社して担当した作品でフレンチ料理を用意することになりました。そもそも行ったことが無いので、準備がとても難しく、現場でもうまくいかず、やっとその言葉の意味を理解しました。
この仕事は、色々な経験が必要で、もっともっとたくさん勉強することで溢れているのだと実感しました。
色々な美術会社の面接をたくさん受けましたが、受からないこともありました。
でも今となっては、映画・ドラマ製作の会社へ入社してよかったと思います。映画・ドラマのような台本がある美術の仕事が自分には向いていると思っています。
2023年Netflix全世界同時配信予定の「THE DAYS」という作品です。私が今まで担当した中でも一番大規模な作品でした。
2011年に起きた福島第一原発事故を事実に忠実に描いたオリジナルドラマです。どこまでリアルを忠実に再現できるのか、役への思いの汲み取りながら、全部署が関わってくるメインになる小道具の準備など、とても大きな責任を感じながら、長期間の撮影に取り組みました。
Zoomでの打ち合わせや在宅勤務などを駆使することにより、自分に費やす時間が増えた気がしました。仕事以外にも映画を見たり、どこかへ出掛けて感性を高めていくのも、仕事のうちなのでそういう点では有意義に過ごせたと思います。
いつも大切にしていることは、作品に馴染む小道具を用意することです。頑張った小道具の寄りを撮影してほしいとは思いません。馴染んでいれば、それで良いのです。役者さんが自然に手に取り、セットに馴染み、最初からそこにあった様に見えれば私はそれで良いのです。
小道具という仕事をするうえで、必要なのは、「私はこう思う」と考えることができる力です。監督と役者の思いを汲み取るのは大前提ですが、自分の思いも監督へ告げて良いのです。台本に書かれているものよりもっと素敵で良い物があれば、小道具というポジションでも台本を変える事が出来ます。
そして、日常や非日常を扱った様々な作品を作っていく上で、今までの人生経験が全て実になっています。様々な年齢層の人と出会い、喜怒哀楽を経験した学生生活があったからこそ、台本を読み解く力が備わったと思います。
今後の目標は、自分に満足せず、ハングリー精神を絶やさない事です。小道具は美大卒じゃなくても、絵が描けなくても、Illustratorが出来なくても大丈夫です。ただ、頑張る気持ちと笑顔があれば、誰でもチャレンジできる仕事です。
学生時代に何でも吸収して、楽しい日々をお過ごしください!その素敵な思い出達が、小道具になったときに存分に活かせると思います。