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Interview

就職した先輩たち_MVディレクター 瀬里 義治 さん

業界で活躍する卒業生に聞きました

MVディレクターとして活躍する瀬里さんに、学生時代の思い出、仕事への取り組み方について語っていただきました。

(株)セップ MVディレクター

瀬里 義治 さん

Seri Yoshiharu

2009年卒業

1983年生まれ、千葉県出身。

2009年株式会社SEPに入社。2014年にAlexan drosの『Kick&Spin』、2015年に清竜人25の『Will♡You♡Marry♡Me?』の各MVで、SPACE SHOWER MUSIC VIDEO AWARDS「BEST VIDEO〜優秀作品 50選〜」に選出される。そのほかのMV代表作に関ジャニ∞『大阪ロマネスク feat.葉加瀬太郎』『Black of night』、東京ゲゲゲイ『愛のフルコース(feat.武田真治)』『Black Cat』、山崎まさよし『21世紀マン』、BLUE ENCOUNT『DAY×DAY』、AKB48『ギブアップはしない』など。LIVE映像の代表作に藤木直人やGLAYなど、有名アーティストの作品を制作。

プロになると必要になることを在校中に学べたのは、いい経験になった

この業界を目指そうと思ったきっかけを教えてください。

もともと音楽が好きで、MV(ミュージックビデオ)を見るのも好きだったのですが、好きなアーティストのMVを見て、「自分でも手がけてみたい」と思ったことですね。
実は僕、大学へ進学しているんです。やりたいことを目指すよりも、大学に行くのが当たり前という家庭で育ったので、何の気もなしに進んで。ただ志望校には入れず、別の大学でプログラミングなどを学んでいたんですが、それを仕事にしたいとは思わなかったんです。じゃあやりたいことは何なのかと考えて、映像制作に携わってみたいと思い立ちました。

それで映像関係の企業を何社か受けたのですが、全部落ちて。「とりあえず情報と人脈がほしいな」と考え、専門学校を調べたんです。ある学校のオープンキャンパスへ行ったんですけど、“陽キャ"(陽気で外交的な人)ばかりで、校舎案内からしてアトラクションみたい。まぁ、それが僕には合わなくて(笑)。そのあと、この学校のオープンキャンパスに行って、「ここが一番いいな」と感じたんです。雰囲気がよかったのと、当時で僕が3期生という新しい学校だったから、自由度が高そうに見えました。さらに、先輩からも「好きなことをやってるよ」と教えてもらったんです。機材を借りて撮影したいと思ったとき、他の学校だとハードルが高いんですが、この学校だと借りやすそうでしたし。校風的に「インターンなどで外に出て実践を積み、人とのつながりを持ちなさい」というスタイルだったので、それがすごくいいなと思いました。

学校で印象的な授業は?

技術系の授業が好きでした。たまに演出も手がけるカメラマンの講師の方がいて、その先生が連れてくる実際のアーティストでMVを作る特別講義があったんです。それが一番実践的で、楽しかったですね。

企画の考え方、企画書の作り方、「こうしたら単調にならない」という編集の方法など、全体を通して関わらせてくれるんです。
撮影の授業だと、撮影しかできない。でも全体の流れを知らないと、演出はできません。座学だけだと、「この曲の企画書を書いてみよう」と言われても、何から手をつければいいのかわかりません。
その意味でも、実際に作ってみる授業があったのはよかったなと思います。ある程度の予算の中で、アーティストの意向を聞いて、どういうものを作っていけるかプラン立てすることが、プロになると必要になります。そういうところを在校中に学べたのは、いい経験になりました。

在校中に印象的なことと言えば、結構多かったイベント系。学園祭や映画祭の実行委員会を任されたことは、今でも覚えています。
全体のコンセプトを、僕が決めてよかったんですよ。それでスタジオ内にやぐらを組んで太鼓を乗っけて、周りは出店で囲みたい、という企画を出したんです。あと、花火も上げたかったので、それはプロジェクターで上げようと。本当は、神社へ行く参道も竹林とかで作りたかった。そのコンセプトを美術や照明担当に伝えたところ、みんな困っちゃった(笑)。
「予算がこれだけかかる」と教務部に提出したら、「こんなに出せるわけない」と言われて(笑)。各方面との交渉を重ねに重ねて、最終的に実現することができました。

ELLEGARDENの復活ライブにカメラマンとして参加

今の会社に入社した決め手は何でしたか?

学校の授業を受けているうちに、「やっぱりMVを作りたいな」と改めて思い、制作会社をいろいろと当たってみたんです。それで弊社のサイトを見たら、作品と制作者情報が載っていて、その中に大好きな監督の名前があったんですよね。あと作っている映像の本数が、僕が見た会社の中で一番多かった。所属している人も多く、携われる機会が多そうだなと思ったのが決め手でした。

現在の仕事は、基本的にMV制作を中心とした映像ディレクターです。企画に関しては、曲をもらって「自由に考えていいよ」というときもありますし、「だいたいこんな感じがいい」と意向を伝えられることもあります。そこから構成がわかる絵コンテを切ったり、撮影時は監督、撮影終了後は編集を担当します。編集室と言われる部屋でマスターを作って、作業は終了ですね。

今までで思い出深い仕事を挙げると、細美武士さんがやっていたELLEGARDENというバンドが好きで、昔からライブに行っていたんです。ただ僕が学生のころに活動休止して、’18年に再開したんですよ。ZOZOマリンスタジアムで復活ライブをしたんですけど、その撮影を担当したのが弊社でした。担当者に頼み、カメラマンとして入れてもらったんです(笑)。ELLEGARDENの復活ライブにスタッフとして参加できたことは、感慨深いものがありましたね。

自分が制作したMVを見て、コロナを乗り越えた人が

大貫さん
仕事のやりがいは、どういうところに感じましたか?

指名で仕事が来る以上は、この仕事をやっていきたいと思っています。自分がずっとMVを制作しているアーティストの担当者から「今回もお願いします」と言われることもあれば、全く知らない人から「ぜひお願いしたいのですが」と急に言われることもあって、そういう依頼があるたびに、「この仕事を続けていきたいな」と感じます。

もちろん、大変なときもありますよ。企画が出ないとき、編集で詰まったとき、「なんでこの仕事をしているんだろう」と思ったりもします(笑)。でも、これがもし趣味だと考えてみたら、やっぱり好きなんですよ。実際は仕事ですから制約がありますけど、自分の中で質を上げ続けることができる。納得いくものを作り続けていける環境や時間があればいいな、と思いますね。

それこそコロナ禍で、「この仕事をやっていてよかった」と思ったことがありました。ニューヨーク在住の日本人がコロナウィルスにかかり、症状や家族内感染などの詳細をSNSの「note」に書いていたんです。僕は単純に「コロナウィルスにかかると、こんなことになるのか」と思いながら読んでいたんですが、そこに僕の作ったMVがリンクされていて。「病気でつらかったときに、このMVですごく励まされた」と、彼が書き記していたんです。そのMVを見て、彼は元気が盛り返したらしく、これもまたエンターテイメントの力なんだと思ったら、うれしかったですね。

現在、すでにライブは配信が前提となっています。この先を予測すると、ネット回線を使ったひとつのサービスという意味で、VRは直接お客さんが買い付けるものになりそうだな、と。ただMVにそれがどう活かされるかというと、まだわからないかな、というのが正直なところです。

今後の目標は?

インドネシアでCMを担当したことがあるのですが、現地のスタッフから「この国で君がCM監督をやったら、バカ売れするよ」と言われたんです。行きたい(笑)。
MVの監督って、ほとんどの作業を自分でやっちゃうんですが、そういうタイプの監督があまりいないらしくて。「こんな色にしたいんだけど」と言われて、「こんな感じですか?」と提示できるCM監督は、まずいない。普通はエディターさんと言われる編集担当が、そのパートを受け持つんです。
でも僕らみたいなMV監督は、いわば器用貧乏で何でもできるから、重宝されるのだとか。だから目標は、インドネシアに移住することですね(笑)。

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